障害科学域とは

 筑波大学人間系障害科学域は、その源を東京教育大学教育学部特殊教育学科に置き、古くは東京高等師範、東京文理科大学において培われた教育科学の研究と教授に関する伝統を受け継いでいる。本学系は、筑波大学開学以来、心身障害学系として、障害を中心とする学問分野の発展充実に努めてきたが、平成19年度(2007年)から、障害科学系に名称変更,さらに平成24年度(2012年)には人間系障害科学域となり,現在に至っている。人間系障害科学域では、障害科学の基礎から応用にいたる広範囲にわたった最先端の研究を行なっている。研究領域は、視覚障害学、聴覚障害学、知的・発達・行動障害学、運動・健康・高齢障害学、音声・言語障害学、 障害福祉学・原理論の六つの領域と鍼灸医学から成り立っている。これらの領域では、それぞれ教育学、心理学、生理・病理学的ならびに学際的な観点からアプローチがなされるとともに、重複した障害のある子どもたちの教育のために、相互の協力のもとに研究が進められている。
 また域は、教授、准教授、講師(助教)、特任助教からなる、全体で40名を越えるわが国でも最大規模の教員陣によって構成されており、内外の優れた研究者や研究機関との共同研究、あるいは特別支援教育諸学校・施設などの教職員との交流・研修もはかっている。さらに、筑波大学附属の特別支援教育諸学校(視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、知的障害、自閉症)では、附属学校教育局、特別支援教育研究センターと密接な連携のなか、教育現場での実践的・応用的課題に関する研究を行う体制をとっている。
 本学域の生み出す障害科学に関する多様な研究成果は、学域関連の教育組織で活用され、地域の人々に対する教育相談に活かされるほか、「筑波大学特別支援教育研究」に毎年その詳細が報告されている。また、筑波大学の理念のひとつである、開かれた大学としての責任を遂行すべく、障害学生の受け入れはもちろん、韓国、中国、台湾、ベトナム、インドネシア、タイ、イラン、スーダン、スロベニアなど、世界各国からの留学生や研究員を積極的に受け入れ、世界各国で活躍する研究者・教育者を輩出するとともに、一般の人々を対象とした、障害科学や障害児者への理解を深めるための活動にも力を入れ、それぞれの研究領域毎にテーマを設定して、年に数回の公開講座を実施している。
 今後は、これらの活動を発展させるとともに、国内外の特別支援教育関係現職教員の研修や、諸外国の教育者・研究者との交流活動にも力を入れ、日本ならびに世界の障害教育・福祉・リハビリテーションの発展のための活動をいっそう促進させることを目指している。