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岡典子教授が司馬遼太郎賞贈賞式であいさつ

第27回司馬遼太郎賞の贈賞式が2月12日、東京都内の文京シビックホールで開かれ、大勢の聴衆を前に、岡 典子 教授(障害科学域)が受賞の挨拶を行いました。

 

(大勢の聴衆を前に受賞の挨拶をする岡 典子 教授)

『ナチスドイツ政権下(1933-1945)のユダヤ人迫害の歴史を研究し始めて、およそ10年。この受賞によって本当のスタート点に立ったと思います。20年は続けたいと思っていましたので、これからは少し自信を持って進んでいきたいと思います。』

岡教授の著書「沈黙の勇者たち ユダヤ人を救ったドイツ市民の戦い」(新潮選書)は、潜伏ユダヤ人とドイツ市民の知られざる共闘を描いたものです。1943年に「ユダヤ人一掃」を宣言した時点で、ドイツ国内には1万~1万2千人と言われる数のユダヤ系住民が取り残されていました。彼らは絶滅収容所送りという運命を拒み、偽造した身分証明書などを持って"ドイツ人"として生き延びます。戦後に生き延びた人は、5千人とも言われています。

『ナチス下のユダヤ人たちは、いかにして追い詰められていったのか、何度も現地を歩きました。収容所、アウシュビッツへと運ばれる鉄道の駅、ユダヤ人が匿われた住居、刑務所、そして資料館。現場に触れる中、精神のバランスを保つのが厳しかった。しかし、一筋の強い光がさしているような感覚を覚えていきました。』

自らの運命に抵抗し、生きる決意をしたユダヤ人。彼らに手を差し伸べたドイツ人は2万人とも言われています。彼らドイツ人自身も周囲の密告に怯えながら、ユダヤ人の迫害に対して、見て見ぬふりをせず、自宅に匿い、偽造の身分証明書を渡し、できる限りの救援をしていきます。

『いま改めて思うことは、素朴な良心から救援したドイツ人、覚悟と忍耐、そして強さとたくましさを見せたユダヤ人たち、それは生きることは何かということを教えてくれています。なぜ、希望を失わず生きることができたのか?それは、相手を信じるという、たった一つのことを頼りに生きたからなのだと思います。自分は一人ではないという確信がそこにはあった。』

司馬遼太郎記念財団によれば、司馬遼太郎賞は、文芸、学芸、ジャーナリズムの中から毎年1回選ばれます。全国の報道機関や財団を構成するマスコミ11社による候補作品の選定などを経て、5名で構成される選考委員会によって決定。これまで、大学教授が受賞するケースは多くはなく、本学教員の受賞も初めてです。

今回の贈賞理由は、次のようにされています。

「ナチスによるホロコーストについては、これまで数多く語られてきました。その多くは被害にあったユダヤ人の側に立ったもので、ドイツ人の中にもユダヤ人を守ろうとして活動をつづけた人がいたことは、等閑視されてきた。本書はそうした救援者に焦点をあて、ナチスの迫害から逃れようとした人々と彼らの間にどのような交流があったのかを描き出している。世界が敵意と分断に直面している今こそ、多くの方々に読んでほしい作品である」

ご受賞、おめでとうございます。

 

 

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